ペルーは、スペイン語圏で、文化的にもスペインを思わせるところが多い。
率直に言って、筆者はスペイン料理は好きではない。
パエジャとか、海の幸のメニューが豊富だが、少なくとも日本で食べるスペイン料理
(だけでなく、地中海料理一般)は、美味しいとは思わない。
やっぱり、海のものは日本料理が一番。
──だから、ペルーの料理も、少々疑いを持ちつつ口にした。
……だけど、この疑いは間違いだった。
ペルーの料理は美味しい。(例外はある)
海産物はもちろんだけど、肉料理もそれに劣らず素晴らしい。
特に牛肉は血も滴るような新鮮で美味なぶ厚い肉が出て来て、もう感激してしまう。
まず、こっちの話から書こう。
ナスカで一泊した翌朝、朝食にビーフサンドを頼んだ。
すると、これが、ハンバーガー用のパンに、ぶった切ったようなぶ厚い肉が挟まれて(というかはみ出して)出てきて、たったの1ソル(約45円)。
レストランと書いてあるけど、昔の駄菓子屋を半分に切ったぐらいの大きさで、間口半間奥行き3メートル、ボロイ木のテーブルがたった一つ。
そのすぐ奥が台所。(と言うよりは薄暗いだけでそのまま続いてるようなもの。)
店のオバチャンは、最初、そのテーブルに座って朝食を食べてて、こっちも同じテーブルに座って注文する。
……というか、お喋りを始めるのに近い。
W日本人?Wとか聞きはじめて、料理にかかるまで少し時間が経つ。
「ミルクコーヒーとパンとマーマレードください。」
("Un cafe con leche y pan con mermelada y えと,なんだっけ?")
「パンとマーマレード?……ないよ。チーズサンドかビーフサンドだね。」
(" Pan con memrmelada?...No. なんたらかたら sandwitch con queso なんたら
sandwitch con lomo かんたら。"
筆者にはスペイン語がよく分からない。
オバチャンは英語を試みる。
"...Sandwich.Cheeze or beef.")
「じゃ、ビーフサンドとミルクコーヒー。」
("Beef sandwitch and cafe con leche."……もう英語,スペイン語ゴチャマゼ)
それが、まさかこれ程立派な肉が出て来るとは予想もしなかった。
──食後、お手洗いを拝借しに奥に通ったら、すぐ後ろの小さな台の上に、牛肉の塊がドンと置いてある。
要するにこのデカイ塊からゴシゴシと一片を切り取り
(多分あまりり切れ味のよくないナイフで大雑把に切ってるんだ)
フライパンでじゅわ〜と両面焼いてパンに挾んでいる。
そして、この肉は今朝早く農家のオジサンが運んできたに違いない。
実際、朝早くから明けてるレストランで朝食をとっていると
血のにじんだ大きな袋を担いだオジサンが店の奥へと通って行くのによく出会う。
……大体において、どこでも牛肉はこんな感じだ。
Anticucho(ブロセットもしくはバーベキューと考えておけば良い)の牛肉もぶ厚くおいしい。
畜産国ではないからカスカスの不味い牛肉を予想していたのだけれど、とんでもない。
充分においしい。
Asado(焼き肉……どちらかというとビフテキに近い)もたいがいの店でメニューに載ってて、
これは180円ぐらい。
厚みは約1cm。
でも、まともなサイズ。
多い店だと二枚出てくる。
この anticucho というのはペルー料理の代表格の一つで、あと二種類食べたけど、
どっちもおいしかった。
そのひとつは、corazon(心臓)の anticucho。
牛の心臓だと思ったけどちゃんと聞かなかったから正確なところは判らない。
3cm角のブロック状で、串二本に六個。
コリコリしてて、内蔵というのとは違う味わい。
もうひとつは車海老の anticucho。
身が、よく締まってて味わい豊かで、思わず、お替わりしようかと思った。
大体において料理の量は多い。
(リマの気取った店は除く。)
単品料理を頼んでも、お皿には必ずサラダと主食(ポテトかライスかパスタ)が付いて来る。
少食な人間はスープだけでも残しかねない。
嫌と言う程具が入っている。
路上(屋台)で食事をするのも大好きで、これがまた、安くて美味しくて量が多い。
定食が1〜1.5ソル(45〜70円)で、スープ(麺の入ってる事もある)とメインディッシュとジュースぐらい。
こう書くと少なそうだけど、上に書いた通り、少食な人間ならスープだけでお腹一杯になる。
さすがに定食の各皿は少な目だから、スープだけで残す人はいないと思う。
でも、メインディッシュには、山盛りの arroz(御飯)とかスパゲティーが付いて来るから、
はっきり言って多い。
メインはフリータス(から揚げ)の場合が多かった。
これが日本と全く同じ。
いわしのから揚げなんかだけど、身がのってて本当に美味しい。
たまねぎの輪切りにお酢(ドレッシング)をかけたのなんかと一緒にお皿に盛ってあって、
ボール一杯のレモン(それともライム?……すだちぐらいの大きさの緑の実)を
出してくれるから、これを搾ってかける。
おいしいんだぜ!!……あと、フライで食べた魚は、鱒。
魚自体も美味しいし、薄い衣をうまく揚げてあって、身も柔らかいんだけど、これは味付けが足りない。
醤油が欲しいなって思う。
さて、最後にペルーの名物 cebiche の話をしよう。
新鮮な海産物を野菜とドレッシングに混ぜて出してくるという実に簡単な料理。
(本当は漬け込んであるらしい。マリネである。)
値段は、ペルーにしてはちょっと高めで4ソル(190円)程度。
旅の最後に海岸沿いの都市を回る予定で、ここらで食べようと思っていたんだけど、
1週間早く仕事に呼び戻されてしまったから、あまり食べなかった。
でも、充分驚くものがあった。
──記憶に鮮明に残っているのは二回。
ひとつは mixto といって数種類の海産物を混ぜたもの。
貝柱と牡蛎が出てきた。
場所は、海岸から150km 離れた標高 4000m の高地である。
富士山よりも高い所で、新鮮な貝を食べられるのだ。
その余りの量の多さと、空気の薄さのせいで、しばらくは苦しくて動けなかった。
(イジキタナイコト...)
そして、あとの一回が凄かった。
この話を、帰国してから何人にした事か。
ナスカでガイドのニイチャンに連れてってれてってもらった店なんだけど、
なんと出てきたのが皿に山盛りのうにである。
直径15cmぐらいの皿(日本だとパン皿に使うようなもの)一杯に盛ってある。
正確に言うと、皿一面に一層目が敷いてあり、その上に、端数cmを余して二層目があり、
さらにその上にサラダが載り、ドレッシングは底にたまっている。
もちろん、うにはとびっきり新鮮。
一体、日本のまともな寿司屋でこれを食べたら幾ら取られるだろう。
……と頭の片隅で考え、一気に腹いっぱい食べてしまった。
なにせ、たったの190円だ。欲しけりゃまたどこかで食べられる。
まだまだ、 mate de coca (コカ茶) の話とか、
20センチモ(9円)の churros の事とか、
屋台の定食屋で見かけた蟹料理とか、一杯あるけど、
今回はここまで。
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