HOME  TOP  その二

ペルー報告 その一:ラテンの国ペルー

「ペルー」と言うと、「アンデス」,「インディオ」,「インカ」というイメージが浮かんできて、
「ラテンアメリカ」という事実を忘れがちだ。
実際、深夜リマに到着しても、翌日動き始めてみるまで
ラテン系の国というイメージは頭の中にかけらもなかった。

ところが、とんでもない。ラテンの国なのだ。
女性達はスタイルが良くセンスが良く魅力的だ。
若者達は陽気で町にはサルサの音楽が溢れている。

……音楽については到着した晩午前2時に既に気付いていた。
なんとFM局が20局以上あって、サルサはもちろん、ロック,クラシックの専門局もある。
サルサやポップスのDJは、もう、凄くファンキーだ。
Wスーッペル・ラァディイオウ!W(スーパー・ラジオ)とか、
Wルルルラーディオウ・マアルコオ!W(ラジオ・マルコ)とか、
局名を叫びながら、早口の巻き舌で喋る。
(スペイン語は江戸っ子風に巻き舌である。)

イントネーションも日本語と似ていて、最初、ラジオを聞いた時は日本語かと思った。
商店や露店でも、このFM局の音楽が軽快に流れていて、この辺の音楽的素地は日本の数倍進んでいる。

街には、日本や韓国の中古ワンボックス&バス(もうボロボロ)が溢れていて、
漢字やハングルの広告文字とか、W自動扉Wなんてのをボディーに付けたまま走っている。
(もちろんそのW自動扉Wは、人が手で開けるのだ。)
右側通行なので、運転席と乗降扉だけ左右逆にして付け直し
(どうやってるんだろ?……でも、中には元のままのもある)
Wxxx幼稚園WとかW+++醤油Wとか書いたままの車が走ってる。

ワンボックスは、「コレクティーボ」と呼ばれる近距離交通の主要メディアで、
運転手と呼び込みのニイチャン(車掌とはちょっと違う)の二人でやってる。
鉄道,公営住宅,通信等自国資本を要する事業は未発達
……と言うか、鉄道に至っては遠距離鉄道が四路線程あるだけだ。
走ってる車の十台のうち三台がバスで四台がコレクティーボといった感じである。
この二つを使って、朝夕のラッシュ時、一時間ぐらいかけて通勤する。
車のフロントグラスには、通りの名前や行く先を書いた蛍光色のシールが貼り付けてあり、
呼び込みのニイチャンは、交差点ごとにスライド・ドアの窓から上体を乗り出して、
Wボリビアないか!キューバないか!W(通りの名前)ってな感じで、路上の人々に声を掛ける。
一応ルートは決まっているけど、知らない人が多くて、Wxxx行く?Wと聞いてくる。
ニイチャンも知らない時があって、運転手と話をして、Wなに、行かないの?Wって、すぐ降りる人もいる。

ワンボックスだから当然小さくて、助手席に二人、後部との境界(ここにもベンチシートを作っている)に三人、
そして二人席+一人席が二列、最後が三人掛け……十四人ぐらいがまともな線だ。
もちろん、こんなに入ると狭くて(でも、もっと入れる時もある)、
ハッとする程きれいなオネイチャンと膝をつき合わせ間近に座ったり、
ぴったり横並びにくっついて座ったりする訳だ。
もちろん、汚れた服のオッチャンや太ったオバチャンの来ることの方が多い。
けど、美しくないのはこっちも同じだから、彼らの方だって、
Wなんや汚いのが横に来たでWとか思っているに違いない。

そして、この「コレクティーボ」の中では、サルサやポップスがゴキゲンな音量で鳴っている。
もの凄くノリの良い曲があって−−古株らしい LOS DEL RIO というグループの
MACARENA という曲なんだけど−−サルサの局では、もう、十分に一度ぐらいは鳴ってる。
本当に、思わず踊りだしそうな曲。
こんなのをかけながら、ニイチャンは
Wベナビーデスないか!タックナーないか!Wと呼び込み、
乗客から料金を徴収し、ドアのゴムや椅子とかが壊れると快活に笑い飛ばし、
降りる場所が来ると乗客に教えてくれる。

音楽は街中至るところで流れていて、だから、リマ中がそんな雰囲気だ。
都市というよりは、まるで海辺のリゾートにいて、これから泳ぎに行くような気分になる。
だから、ガイドブックでペルーの治安の悪さについて散々読まされてきた観光客は一様に驚く。

ペルーは、高度成長期に差しかかった頃の日本のようで、
人々は活気に満ち、余暇を楽しむ事に積極的になっている。
社会は未だ高度資本化社会になっておらず、人々の日々には余裕があり、暖かく、親しげである。
旅行するなら今だ。
この先、先進国並に情報化が進み、人々の心にテクノストレスが溜まり始めれば、
これ程素敵な国であり続けるのは無理だろう。

ペルーの治安について
数年前まで国内情勢が極度に悪かった国だけに、街は警官と警備員で埋まっている感がある。
彼らは拳銃はもちろん、マシンガンやライオットガンを肩から吊し、軍関係施設の前に到っては弾痕の生々しい装甲車が並ぶ。
すべての銀行,高級レストラン,高級ホテル,公共施設の前には彼らが数名ずつ並び、入り口のすぐ内側にも数名が訪問者に眼を光らしている。

一見厳めしい雰囲気だが、どの街角にも彼らが多数いて監視してくれており、そのおかげでガイドブックの警告するようなひったくりやスリに対する恐怖はない。
事実、ペルーの人々の中には、平然と高価な装身具を身につけ、ウォークマンを聴きながら歩いている人もいる。
治安の良い住宅街など、真夜中でも女の子達だけで散歩している。
警官も、よく見れば親しげな人々で、仲間同志でマシンガンを見せ合ったりしてるし、有り難い事に道を尋ねたり店を尋ねたりすると全然嫌がらずに教えてくれる。

……とは言え、ひったくりやスリは繁華街では未だに発生している。

でも、日本だってほんの二、三十年前まで、繁華街に彼らはいた。
子供の頃、街に出る時には親から注意されたものだ。
要するに被害に合うのは、本人の不注意が大きい。
地元の人間より旅行者の方が狙いやすいのは当然だし、そのうえに注意散漫なら、まさにネギ背負ったカモだ。

次へ